MENU

#09 流通を担い作り手を支え、産地を守り続けてきた問屋 KUTANism全体監修・秋元雄史が自ら現場に足を運び、ナビゲーターと対談をするなかで九谷焼を再発見していく連載シリーズ「秋元雄史がゆく、九谷焼の物語」。ここまで作家や職人たちの技や技の受け継がれ方に注目してきましたが、第8話と9話では「産業と九谷」をテーマに、産業の面から九谷焼を支えている企業を訪れます。今回伺ったのは、大正時代に創業し長年九谷焼を支えてきた老舗問屋「伊野正峰」と、インターネットを駆使して現代の卸業を営む「北野陶寿堂」です。

時代の流れ共に変わる問屋のあり方や流通の仕組みについて、主に戦前から戦後を「伊野正峰」に、昭和後期から令和にかけてを「北野陶寿堂」にお聞きしました。産地を代表する問屋2社へのインタビューを通じて、九谷焼業界の変遷や流通の変化をたどります。

幅広く商品をラインナップし、九谷焼を知るきっかけを提供する

功一:
私が入社したばかりの頃はカタログ通販が主流でしたが、ここ最近、特にコロナ禍になってからは一気にネットへの移行が進んでいるように感じます。大手インターネット通販サイトを利用する人がほとんどですし、流通自体がすごく変わってきていますね。
秋元:
コロナの影響でさらに加速していますよね。カタログ販売の仕組みについて改めて教えていただけますでしょうか。
功一:
自社で発行するカタログと、問屋が加入する組合として発行している総合カタログの2種類があります。組合のカタログに掲載している商品は組合の倉庫や各メーカーで在庫を保管しています。
秋元:
なるほど、問屋の組合として作っているカタログに載っている商品は、どの問屋でも扱えるということですね。現在はどんな商品を主に取り扱っているのでしょうか?
功一:
創業してから100年間でどんどん商品が集まって、新しいものもあれば、中には相当昔に仕入れたものもあります。このショールームでは一階は主に作家さんの作品、二階にはいわゆる転写、吹き付け等の量産品、オリジナル製品、そして贈り物として購入しやすい価格の製品を中心の展示しています。お越しになられた方にできるだけ満足していただきたいので、なるべく多くの人に楽しんでいただけるよう、作家物だけでなく幅広いラインナップと価格帯を取り扱っています。

作家・中村重人とコラボレーションしたライト「かざりドーム」。光を通す磁器を使用し、それに合わせて調合した和絵の具で絵付けをした飾り照明。点灯するとやわらかい光で絵付けの美しさが際立つ。

秋元:
主力の商品となると、どういったものになるのですか?
功一:
うちの場合は主に食器やインテリアがメインです。「日常使いの食器としては少し高いけれど九谷焼にしては比較的手頃」といった価格帯が一番人気で、例えば飯碗で1500〜2000円くらい、小皿では1000円くらいのものがよく売れます。また、オリジナル品や高価でも完成度の高い商品も人気です。最近ではキャラクター商品やコラボ商品なども増えてきました。九谷焼というと高価なイメージを持たれることが多く消費者の方になかなか振り向いていただく機会がないので、私たちとしては日常で「ちょっと良いもの」を使っていただきたいと考え、ラインナップも工夫しています。
秋元:
ここまで現在に至るまでのお話を伺ってきましたが、インターネットでの販売が急激に増えるなか、今後の展望を教えて下さい。
正満:
インターネットはもちろん意識していますが、どんなに世の中が変わっても、やっぱり営業というのは一番大事なことだと思うんですね。この商売は本当に難しくて、何をするにしても売り手に情熱がないと上手くいきませんから。どうやったら販売できるんだろうとか今度はあっちへ行ってみようとか、そんなことばかり考えていますよ笑。
秋元:
流通が変化したり消費者の好みが変わったりしたとしても、器や皿がなくなってしまうことはありませんので、いかに時代に合わせていくかということですよね。最後の質問です。近年では消費者が直接作家を訪れたり、作家がどんどん前に出て行って自ら販売するということも増えてきましたが、その点についてはいかがでしょうか?
功一:
私たちとしては、九谷に興味を持ってくださっているお客様がうちのショールームを訪れたときに、色々な作家を知ったりそのなかで自分の好みに合う作品を見つけたりするきっかけをご提供できればと思っています。色々な九谷焼を一堂に集めている場所があれば、お客様は価格を比較したり作風を見比べたりしながら選ぶことができますよね。また、それが結果的に作家にとっても幅広く商売を広げたりファンを増やすきっかけになると思っています。

作家物を集めたコーナー。

次ページは:昭和、平成、そして令和へ、
インターネットを武器に時代の波を乗りこなす